ウェハー洗浄ジグの選び方|手動洗浄における判断ポイント
洗浄ジグ選定の前提条件
手動洗浄に用いるウェハー洗浄ジグを選定する際には、まず使用材料が洗浄工程に適していることが前提条件となります。
一般的に、ウェハー洗浄では薬液や純水を用いることが多く、ジグ材料には耐薬品性と清浄性が求められます。また、洗浄中や取り扱い時にウェハー表面を傷つけないため、適度な柔らかさや低摩擦特性を備えていることも重要です。
これらの条件を踏まえると、
**PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)**は、
手動洗浄用ウェハー洗浄ジグの材料として適した特性を持っています。
PTFE はほとんどの洗浄薬液に対して安定しており、表面エネルギーが低いため、ウェハーへのダメージや汚染のリスクを抑えやすい材料です。
そのため、手動洗浄を前提とした洗浄ジグの検討においては、PTFE を基本材料として考えることが一つの判断基準となります。
洗浄過程の確認が必要かどうかから考える
洗浄ジグを選定する際には、洗浄の途中経過を確認する必要があるかどうかも、重要な判断ポイントとなります。
洗浄工程によっては、
・表面状態の変化
・汚染物の除去状況
・気泡や付着物の有無
などを、洗浄中または直後に目視で確認したい場合があります。このような場合には、ウェハーの洗浄面が見えやすい構成が求められます。
ジグをエッチングなどに流用する場合も同様です。
一方で、洗浄条件が確立しており、工程の途中で状態を確認する必要がない場合には、処理効率や取り扱いの安定性を優先した構成を選ぶことも可能です。
洗浄過程を確認したい場合
洗浄中にウェハー表面の状態を確認したい場合(ジグをエッチングに流用する場合も含む)には、横型構成で、洗浄面を上向きに保持し、1枚ずつ洗浄する方式が検討されます。
この構成では、洗浄中や洗浄後にウェハー表面を直接確認しやすく、研究開発や条件出しの段階で用いられることがあります。
もしくは、縦型洗浄ジグとガラス容器の組み合わせも有効です。
洗浄過程の確認が不要な場合
洗浄工程が安定しており、途中での目視確認が不要な場合には、
縦型構成で複数枚のウェハーを同時に扱う方式が選ばれることがあります。汚れ面が片面の場合には、汚れ面を下にして横型洗浄ジグを使用する方法もあります。
洗浄能力から考える(汚れの性質による違い)
洗浄ジグの選定においては、どのような汚れを除去したいのかという点も重要な判断ポイントとなります。
汚れの性質によって、適した洗浄姿勢や構成は異なります。
洗浄中にパーティクルとして残りやすい汚れの場合
ダイシング後の洗浄や、リフトオフ工程後の洗浄などでは、除去された汚れが溶解せず、固形のパーティクルとして残る場合があります。
このような場合には、洗浄中に発生したパーティクルが再付着しにくい構成を考慮する必要があります。
代表的な考え方としては、
横型構成で洗浄面を下向きに保持する(1枚ずつ)方式や、縦型構成でウェハーを立てた状態で洗浄(ガラスなどの透明容器を使用)する方式が挙げられます。
いずれも、重力を利用してパーティクルを洗浄面から遠ざけやすい点が特長です。
また、横型構成で洗浄面を上向きに保持し、1枚ずつ洗浄する方式も考えられます。
超音波洗浄機ではなくツイストミキサーを使用して丁寧に洗浄し、発生したパーティクルを砕くことなく除去する運用が可能です。特にリフトオフで有効な方式となります。
溶解するタイプの汚れの場合
レジストのように、洗浄液中で溶解して除去される汚れを対象とする場合には、洗浄中にパーティクルとして残りにくいため、洗浄姿勢による影響は比較的小さくなります。
このような場合には、横型・縦型いずれの構成でも大きな問題は生じにくく、作業性や取り扱いの安定性を重視して洗浄ジグを選定することが可能です。
洗浄液の危険性から考える
洗浄ジグを選定する際には、使用する洗浄液の危険性や取り扱いリスクも考慮する必要があります。
特に、フッ酸(HF)に代表されるような人体や設備に対して危険性の高い薬品を使用する場合には、洗浄後の液残りや飛散をできるだけ避ける構成が求められます。
このような場合には、接液部に不要な隙間が生じにくい横型構成が適しています。横型構成では、洗浄後に薬液がジグ内部や隙間に滞留しにくく、
すすぎや回収を確実に行いやすいという特長があります。結果として、作業者の安全性向上や、次工程への影響低減につながります。
一方で、縦型構成では、薬液と接する部分にもねじや接合部があるため、このわずかな隙間に薬液が残留する可能性があり注意が必要です。
洗浄液の温度条件から考える
洗浄ジグの選定では、洗浄時の温度条件も重要な判断ポイントとなります。
硫酸過酸化水(SPM)や各種剥離液のように、高温で使用される洗浄液を用いる工程では、ジグにかかる熱的な影響を考慮する必要があります。
特に、横型構成などの非対称な構造では、加熱時に温度分布の偏りが生じやすく、樹脂材料に反りや歪みを生じる場合があります。
したがって、高温条件での使用を想定する場合には、構造的に対称性を持たせやすい縦型構成が適しています。
縦型構成は、熱による変形を抑えやすく、高温環境下でも安定した保持状態を維持しやすい点が特長です。
洗浄容器の入手性から考える
洗浄ジグの選定では、使用する洗浄容器の入手性や準備のしやすさも、実務上は重要なポイントとなります。
横型構成の洗浄ジグでは、一般的なビーカーや結晶皿、バットなど、市販されている標準的な容器をそのまま使用できる場合が多くあります。
そのため、洗浄工程の立ち上げや条件変更の際にも、容器の準備に時間やコストをかけずに対応しやすいという特長があります。
一方、縦型構成の洗浄ジグでは、薬液を節約するために、ジグ形状に合わせた専用の洗浄容器が必要となるケースがあります。
この場合、容器自体を特注で製作する必要があり、準備期間やコストを考慮した検討が求められます。
横型・縦型 洗浄ジグの適合表(判断軸まとめ)
| 判断軸 | 横型 (上向き・1枚) | 横型 (上向き・複数枚) | 横型 (下向き・1枚) | 横型 (下向き・複数枚) | 縦型 |
|---|---|---|---|---|---|
| 洗浄(エッチング)過程の目視確認 | ◎ | × | × | × | ◎ |
| パーティクルが発生する汚れ(リフトオフ、ダイシング) | 〇 | × | ◎ | △ | ◎ |
| 溶解する汚れ(レジスト等、エッチング) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
| 危険な洗浄液(HF等) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | △(◎小型のもの) |
| 高温洗浄液(SPM・剥離液) | △ | △ | △ | △ | ◎ |
| 洗浄容器の入手性 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × |
縦型か横型か | 判断に迷ったら
縦型洗浄ジグ
縦型構成は、洗浄能力の面では非常に優れた方式ですが、洗浄容器の入手性が低いという実務上の制約があります。
ジグに合わせた専用容器を用意する必要がある場合も多く、工程立ち上げや運用のしやすさを考えると、選択肢としてはややハードルが高い形式といえます。
一方で、2cm角ウェハー用などの小型ジグでは、一般的なビーカーを用いた洗浄に対応できる構成もあり、条件が合えば非常に扱いやすい方式となります。また、小型ジグは削り出しによる一体成型構造としているため、接液部に隙間が生じにくく、液残りが少ないという特長があります。
このため、HF 洗浄のような危険な薬液を使用する工程にも適しています。
横型洗浄ジグ
横型構成は、使い勝手の良さと汎用性の高さが特長です。
特に、1枚ずつ洗浄する運用とすることで、多くの条件に柔軟に対応することが可能です。
長時間にわたって高温条件にさらす場合には、部品の一部に歪みが生じることがありますが、影響を受けた部品のみを交換することで、ジグ全体を長期間使用し続けることができます。
洗浄ジグについては、以下のページでまとめています。
→ ウェハー洗浄ジグの役割と特長(全体像はこちら)











