原子層堆積法(ALD)のコンフォーマル成膜とその実例

原子層堆積法(ALD)は、三次元構造の表面全体を均一に被覆できるコンフォーマル成膜性を大きな特長とする成膜技術です。微細構造や高アスペクト比構造に対しても形状に沿って成膜できる点は、他の成膜法にはない強みとなっています。

本記事では、実際の微細構造試料にALDを適用した研究例をもとに、ALDのコンフォーマル成膜がどのように実証されているかを解説します。

コンフォーマル成膜とは何を意味するのか

コンフォーマル成膜とは、基板表面の凹部・側壁・底面といった三次元構造の全面を均一な膜厚で被覆できる性質を指します。平坦な基板上で均一な膜厚が得られることとは異なり、微細構造内部まで同じ膜厚で成膜されていることが重要となります。

特に高アスペクト比構造では、一般的な成膜方法では開口部と深部とで成膜レートが大きく変わってしまい、膜厚の偏りや未被覆領域が生じがちです。コンフォーマル成膜が成立している場合、どの位置においても膜の連続性と均一性が保たれていることになります。

ALDでは、立体構造の表面に吸着したプリカーサ(前駆体)のみが反応ガスと反応して成膜されます。高アスペクト比の構造であっても、十分な拡散時間を確保すれば溝の底部までプリカーサが到達しますので、位置に依存しない成膜が可能です。

光学的な微細構造とALD適用の背景

以下で紹介する微細構造は、光学的機能を実現するために必要な三次元構造として形成されたものです。周期的な高アスペクト比キャビティ構造は、特定の光学特性を発現させるために不可欠であり、その構造形状自体がデバイス性能を決定づける要素となっています。

この三次元微細構造に対して、金属層と誘電体層からなる多層膜を構造全体にわたって連続的かつ均一に形成することが必要です。膜厚はナノメートルオーダーで精密に制御される必要があり、側壁や底部を含むすべての面で同一構成が維持されなければ、設計通りの光学特性は実現しません。

しかし、スパッタや蒸着、一般的なCVDといった従来の成膜手法では、構造内部まで安定した膜形成を行うことは困難です。そのため、構造形状に沿って膜厚を自己終端反応で制御できるALDが不可欠なプロセス技術として選択されています。

光学的特性そのものの詳細については元論文を参照してください。このデバイス機能の成立はALDのコンフォーマル成膜性を前提として初めて可能になっていることが、本研究の本質といえます。

(参考資料:清水信 他 “多層膜被覆周期的微細構造を用いた高温用太陽光選択吸収材料”,電気学会論文誌E部門誌 137(11) 393-399 2017年)

断面観察から確認されたコンフォーマル成膜の実証

成膜後には、微細構造の断面観察を行い、キャビティ内部の側壁および底部に至るまで多層膜が連続的に形成されていることを確認しています。断面像からは、設計通りの膜構成が構造全体にわたって維持されていることが明確に示されました。

この結果は、ALDによるコンフォーマル成膜が単なる理論的特長ではなく、実際の三次元機能デバイス構造においても要求仕様通りに成立していることを実証しています。

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