陽極接合
ガラスとシリコンを接着剤を使わずに直接接合できる技術として、MEMS分野を中心に広く使われているのが陽極接合です。高精度な位置合わせや真空封止が必要なければ、ヒーターと高圧電源、そして均一に押さえるための重しがあれば十分で、装置構成はとてもシンプルです。シンプルなプロセスで高い気密性と強固な接合強度が得られることから、各種センサやマイクロデバイスの製造で定番の方法となっています。
この接合方法では、ナトリウムなどのアルカリイオンを含むガラスとシリコンを重ね、数百℃程度に加熱しながら高電圧を印加します。すると、ガラス内部のアルカリイオンが電場によって移動し、ガラスとシリコンの界面近傍に電荷が集中します。この電気的な引力によって両者が強く引き寄せられ、界面で化学結合が形成されることで、非常に安定した接合が実現します。
接合後の界面は見た目にも一体化しており、高い気密性と優れた機械的強度を兼ね備えています。そのため、圧力センサや加速度センサ、マイクロ流体デバイスなど、内部に空間や流路を持つ構造の封止用途に使用できます。また、アウトガスが少ない点も大きなメリットで、高温環境や真空環境で使用されるデバイスにも向いています。
一方で、いくつか注意すべき点もあります。ガラス中にアルカリ金属イオンが含まれている必要があるため、使用できるガラス材料は限られており、主にパイレックスやテンパックスに代表されるホウケイ酸ガラスが用いられます。また、シリコンとガラスの熱膨張係数の違いにより、冷却時に残留応力が生じる場合もあります。
残留応力による基板のそりを低減させるために、熱膨張係数を調整した陽極接合用のガラスも市販されています。
これらを踏まえて条件を適切に設計すれば、陽極接合は再現性が高く、量産にも適した接合技術となります。ガラスとシリコンをきれいに、確実に接合したい場合には、現在でも信頼性の高い定番技術として活躍しています。

